ヘンゼルとグレーテル

後編



家をでて2、3時間すると、彼らは大きな川の前にでました。
「どうする?橋もないしなぁ。これじゃ渡れないぞ?」
セイズは困った顔でレイに話かけました。
「そうだね。あそこにちょどよく白鳥が2匹いるからあれに乗せてもらったら?」
レイの指差したほうには、ちょうどよく白鳥が‥‥‥‥、というか白鳥のきぐるみを着た怪し気な人間がいました。
「お、お前、アレが白鳥に見えるのか‥‥‥?」
「別に乗れるんならなんでもいいよ」
レイはすたすたと白鳥のきぐるみを着た怪し気な人間たちのところへ歩いていきます。
セイズも釈然としないままレイの後をついていきました。

「ねえ、そこの白鳥!僕たちを乗せていってくんない?どうせヒマでしょ?」
無礼な態度でレイは白鳥のきぐるみを着た怪し気な人間たちに頼みました。
「おいおい、そんな態度で‥‥‥‥」
「いえ、いいですよ。どうぞお乗りください」
セイズはレイをたしなめましたが、白鳥のきぐるみを着た怪し気な人間はにっこりと微笑みながら彼らを乗せてくれるといいました。

「と、ところでなんで僕たちこんなきぐるみを着ているんでしょう、ナスル様」
「これもセイズのためです。ガマンしなさい、シュラ」
「はい」
白鳥のきぐるみを着た怪し気な人間たちは、そんな会話をかわしながらセイズたちを背中に乗せました。

「悪いね」
背中に乗ったレイは思ってもいないことを口にします。
それを聞いてなんとなくムカッときたシュラは、背中に乗っているレイに向かって叫びました。
「悪いと思うなら降りたらどうなんだよ!」
「嫌だね、乗せたんなら最後まで乗せてきなよ。それに家に帰るのに僕がいないと、セイズがロカ様に怒られるしね」
「うっ!」
痛いところをつかれて、結局はおとなしくレイを乗せていくしかなかったシュラでした。

そんなやりとりを苦笑しながら見ていたセイズとナスルでしたが、進んでいくうちに、あたりは見覚えのある風景になってきました。
「この辺じゃないか?」
「そうだね。じゃ、この辺で降ろしてよ」
「くっ、えらそうにぃ〜〜〜」
なんだかんだ文句をいいながら、結局シュラはセイズの為にレイを降ろしてやるのでした。
ナスルもゆっくりとセイズを降ろします。
「それじゃあ、わざわざありがとう」
「いえ、それじゃあまた」
「セイズ様、お気をつけて」
「やっぱりセイズを甘やかしすぎだよね、君たちって」
シュラはレイのセリフを聞かないように、ナスルは相変わらず微笑みながら去っていきました。

なんとか家までついたレイとセイズでしたが、レイはトビラの前でなぜか家の中に入るのをためらっているようです。
「どうしたんだ?」
またここでレイらしからぬ行動を不思議に思ってセイズは訪ねました。
「‥‥‥ロカ様がキレイ好きなのは知ってるよね?」
「あ、ああ」
セイズはそれがなんの意味があるかわからずにとりあえず生半可な返事をしました。
「それでこの家をでる少し前、ロカ様の部屋を掃除しようとして窓を開けたらね‥‥‥」
「開けたら?」
「‥‥‥突風が吹いて、部屋がぼろぼろに‥‥‥‥」
レイの顔色がみるみるうちに悪くなっていきます。
「そ、それは確かにまずいけど、そんな心配することはないんじゃないか?」
「‥‥君は付き合いが浅いし、情けないし、ロカ様のこと知らないからそんなこと言えるんだよ」
なんだか途中で全然関係ないことを言われたような気がしますが、とりあえずセイズはショックで沈んでしまっています。
「部屋を汚くすると、ロカ様と部屋を片さないといけないんだけど‥‥‥‥。
それがその‥‥‥恐ろしいんだよね‥‥‥」
「恐ろしい?なにが?」
(一緒に片付けなんてうらやまし‥‥‥じゃなくて、特に恐ろしいことはないような気がするが)
などと考えてしまうセイズでした。
「聞かないほうが身のためだよ」
「はぁ」
釈然としないセイズですが、レイはこれ以上教えてくれそうにありません。

「とりあえず家に入ったらどうだ?ロカだってそんな恐ろしいことは‥‥‥」
「‥‥‥わかったよ」
レイはしぶしぶトビラを開けました。
トビラを開けた先にいたのは、優雅にイスに座りながら新聞を読む、普段と変わらないロカでした。
「ああ、おかえり」
ロカは新聞から目を離し、こちらを向いてそういいました。
「はい、ただいま帰りました」
レイは先ほどとは違い、笑顔でロカにそう答えました。
しかしどう見てもロカは怒ってないようです。

ですが、どうしたことかまわりにはイロハの姿が見えません。
「あれ?イロハさんは?」
セイズはロカに訪ねてみました。
「ああ、イロハなら国に帰ったぞ」
「え?なんで??」
「部屋がなぜか汚かったから、片づけを手伝ってもらったら、なぜか国に帰ってしまったんだ」
「へ、へぇ、そうなんだ‥‥‥」
なにが起こったのか気になるセイズでしたが、あまりに恐ろしくて訪ねることはできませんでした。

そんなロカの前で、ロカに気づかれぬようにニヤリと微笑むレイの姿をセイズは発見してしまいました。
そしてセイズは確信したのです。
自分達がいなくなることで、その恐ろしい片付けをせずに、しかもイロハが国に帰る。
それがレイの作戦であったということに。

「ああ、そうだ。それでイロハのかわりに新しい同居人がきたんだ」
「え?」
レイは不思議そうな声を上げ、ロカの指差す方向を見ると、
「よう!麦パンがおいしいんでここに住むことになったんだ。よろしくな!」
それはなんと、いつぞやあった鳥のきぐるみを着た妙な人間でした。
「‥‥‥‥」
セイズはつかれて声もでません。
「‥‥‥帰れーーーーーー!!!」
「あっはっは、そういうなって〜」
こうしてまたやかましい日々が一生続いたのでした。








ううっ、変な物語でしたがお楽しみいただいてありがとうございます!
実は自分で書いていて楽しかったりした逸品☆
いいですなぁ、こういうのも!
自分ではセイズがザイルを愛の為に殴るシーンが気にいってたり(笑)

ちなみにこれは6666HITしたchiaki様に捧げたものです
お気に召していただけたでしょうか??
なにはともあれ、6666HITありがとうございました!!



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